人の心理を深くまで追求することで、心の動きや感情を理解できる臨床心理学として心のケアや治療に役立てる分野が存在します。
臨床心理学は何となく医療現場で働くというイメージがある方も多いかもしれません。しかし臨床心理士が活躍できるのは、医療の現場だけではありません。
心のケアが必要とされているあらゆる環境で重要視されています。
臨床心理士になるにはどんな条件があるのでしょうか。また、カウンセラー系との資格との違いはあるのでしょうか。
今回は、臨床心理学の仕事内容や資格取得条件、カウンセラーとの違いなどについて紹介していきます。
臨床心理の仕事とは
豆腐メンタルのとふめんです。(@tohumen090031)
臨床心理学とは、人の心の問題に注目し、原因や影響を考えながらメンタルケアを行っていく分野です。
臨床心理士が活躍する場所は医療現場が多そうなイメージもありますが、それだけではなく、学校や職場のようなすごく身近な環境でもカウンセラーとして活躍できるお仕事です。
臨床心理士が一体どのような職業として働いているのか、いくつか紹介していきます。
1.スクールカウンセラー
「スクールカウンセラー」とは学校に所属して、生徒や教師などのカウンセリングを行う仕事です。
まだ心が発達し終わっていない不安定な子供は、不登校や勉強、いじめ、恋愛などが精神状態に大きな影響を与えます。
未成年の心は良い面にも悪い面にも誘導されやすいので、状況を把握して支えてあげる必要性があります。
対象は学校の生徒だけではなく、親や教師に対するカウンセリングを行うこともあります。
2.心療内科・小児科・保健センター
臨床心理士が一番多く活躍されている現場はやはり医療現場です。
精神科、心療内科、小児科を中心として活躍し、病気による心の不安との向き合い方や改善方法をサポートしていきます。
そのほか、自治体の保健センターに所属して生活技能支援や育児相談を行うなど役立つ分野は幅広いです。
3.児童福祉施設・児童相談所・老人福祉施設
児童養護施設での役割は、障害を持つ児童が標準的な社会生活を出来るようにカウンセリングを行うことです。
児童向けデイサービスや高齢者施設などの入居者との面談や、保護者である家族のカウンセリングも行うことがあります。
自治体の機関では児童相談所、老人福祉施設などに所属する例があります。
4.司法分野
司法分野における臨床心理士は、少年院や刑務所など犯罪が関わった人々の心をサポートします。
臨床心理学の観点で、犯罪に関わった人の心理的要因などを追究します。
そのうえで、治療や倫理的再教育などの形で手助けを行います。
司法分野は特に幅広く心理学を付随した様々な専門分野のプロが活躍します。
科学警察研究員
少年補導職員
科学捜査研究員
家庭裁判所捜査官
少年院
刑務所施設
法務技官
保護観察官
こう見ると司法分野での臨床心理士の活躍の幅が分かりますね。
犯罪の当事者だけではなく、被害者や周囲家族などの関係者に対しての治療やカウンセリングを行う仕事も増えてきています。
▼心神喪失者等医療観察法制度
臨床心理士が行うカウンセリングの中でも犯罪、非行に関わる臨床心理は、他分野と比べて少し特殊です。
犯罪非行と向き合
他の分野とどのように異なるのかというと、クライアント(患者)に症状を治そうという意思がなくても強制的に治療を行なわければならないという点です。
それゆえにカウンセラーと相談して協力し合って改善を目指す他の分野と違って、患者との信頼関係が築きにくい特徴があります。
また、対象が犯罪者の場合は、治療だけではなく刑罰を受けることを自覚させるように導く必要もあります。
犯罪者を社会復帰させるための取り組みが進められ、司法制度の変化により新しい制度が導入されてきています。
「心神喪失者等医療観察法制度」は、倫理的判断の欠如や精神障害など正常な判断が出来ない犯罪者に対して社会復帰出来るまで援助を行う制度です。
この制度は殺人や強姦事件のような前科がある人も社会復帰を援助する制度なので不満も出てきます。実際に罪の内容によっては再犯例もあるようです。
これが誰のためを考えた制度なのかは不思議に思うところではあります。
5.職場カウンセラー
日常生活で精神的問題を抱えてしまいやすいのが仕事環境です。
職場の人間関係や、顧客との付き合い、仕事の責任への重圧、過労など、心に過剰な負担がかかる原因が沢山あります。
心に異常が出てくると、仕事のミスやモチベーション低下にも関わってくるため、
相談室をおいたり外部委託によるカウンセラーを呼んだりする職場が増えてきています。
「職場カウンセラー」として臨床心理士が活躍している環境も広がっています。
以上のような様々な分野で活動が行われていることが分かりました。
臨床心理士の資格を取る方法
臨床心理士になるためには
心理学専攻の指定された大学院修士課程を修了することが条件です。
その後の資格審査を合格してようやく臨床心理士の資格を得られます。
指定大学院には3種類あり、資格審査の条件が違います。
臨床心理士資格の資格取得までの流れ
▼第一種指定大学院
1次試験(筆記試験)・2次試験(口述試験)を合格
▼第二種指定大学院
実務経験を1年経たのちに1次試験、2次試験を合格
▼専門職大学院
2次試験のみを合格
そこでようやく臨床心理士となることが出来ます。
臨床心理士とカウンセラーの違い
「臨床心理士」、「公認心理師」と「カウンセラー」どちらも心理に携わる仕事ではありますが、違いが分かりにくい部分でもあります。
実は仕事内容の幅や資格取得要件などは大きく異なります。
カウンセラー
まず「〇〇カウンセラー」というお仕事ですが、こちらは法律で定められた職業ではありません。つまり心理学に関わる仕事をしたいと思えば誰でも名乗ることのできる職業ということでもあります。
言ってしまえば、心理学系の資格がなくてもカウンセラーと名乗ることは出来るのです。
「〇〇相談員」や「〇〇カウンセラー」という仕事は、指定大学院を出ていなくてもなれる可能性があるということです。
カウンセラーの弱点は、法律で定められた資格ではないため司法や医療分野での仕事はできないというところです。
また、心理学系の大学院修了の条件が必須である「臨床心理士」や「公認心理師」と比べて学歴や専門知識量に大きな差があると思われてしまう可能性もあります。
カウンセラーとして仕事をしていくなら、独自のやり方を開拓していく必要もありそうです。
カウンセラーのメリットは資格の種類が多く、資格サイトなどで比較的簡単に学べる、取得できるという点です。
▼カウンセラー系資格の一例
資格名 | 資格取得サイト |
行動心理プロフェッショナル | オンライン通信資格ポータル【ラーキャリ】 |
コーチングプロフェッショナル | オンライン通信資格ポータル【ラーキャリ】 |
ポジティブ心理学 | 【ヒューマンアカデミー】 |
ケアストレスカウンセラー | ヒューマンの通信講座*たのまな『ケアストレスカウンセラー』 |
メンタルケア心理士 | ヒューマンの通信講座*たのまな『メンタルケア心理士』 |
臨床心理士
つづいて「臨床心理士」です。
上記でも紹介したように、臨床心理士になるには指定の心理学専攻大学院を修了している必要がある民間資格です。
こちらは法律で定められた職業であるため、カウンセラーよりも仕事条件の幅が広いというメリットがあります。
▼臨床心理士資格を取得できる学校の一例 北海道地区
学校名 | 専攻 |
札幌学院大学 | 臨床心理学科 |
札幌国際大学 | 心理学科 |
北海道医療大学 |
▼臨床心理士資格を取得できる学校の一例 関東地区
学校名 | 専攻 |
東京未来大学 | 心理専攻 |
埼玉学園大学 | 心理学科 |
筑波女学園大学 | 人間科学部 |
▼臨床心理士資格を取得できる学校の一例 近畿地区
学校名 | 専攻 |
京都女子大学 | 心理学科 |
関西大学 | 文学部・社会学部 |
天理大学 | 臨床心理専攻 |
以上、臨床心理士についての基礎知識やカウンセラーとの違い、資格取得までの流れなどを紹介しました。
カウンセラーは資格が取りやすいというメリットがある反面、仕事に結びつきにくい。
臨床心理士は心理学系の仕事の幅が広い反面、指定大学院修了などの資格取得条件が難しいという特徴があります。
将来どのような仕事をやりたいと考えているかで、選択肢も絞られてくるのではないかと思います。
心理学系のお仕事に興味がある方は是非、参考にしてみてください。
参考
臨床心理士と心理カウンセラーの違い | 臨床心理士の仕事、なるには、給料、資格 | 職業情報サイトCareer Garden
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