ニートになってしまう方は誰もが最初から働く気がなかったという訳ではありません。
就職活動や社会生活の中で精神的な傷やショックを受けたことがトラウマになり、社会を避けてしまうという方もいます。
もちろん真面目に就職活動や仕事に取り組んでいた方も中にはいて、突然無気力状態になってしまうこともあります。
このような無力感の原因は、身をもって体験したことが精神的に影響を与えているとも心理学で考えられています。それが「学習性無力感」という状態です。
今回は、ニートになってしまう原因や心理的影響、無力感と心理学の関係についてなどを紹介していきます。
学習心理学の行動
豆腐メンタルのとふめんです。(@tohumen090031)
ペットや動物園の動物は、どういう行動をすれば怒られる、どうすればエサが貰えるのかを分かっていますよね。
それは「学習心理学」に関連していて、今までの経験によってどのよう結果になったのかを学習して脳が記憶する力があるからです。
お金が貰えるから仕事をする、褒められたいから頑張る、餌が貰えるから芸をする。人も動物も経験から学習します。
逆に、成果を得られないことには努力しなくなることも学習の1つです。
本能と反射
動物は「学習」以外にも、生まれながらに身についている行動というのもあります。それが「本能」と「反射」です。
「本能」とは、誰も教えなくても行うことのできる動物特有の行動です。
人は人、猫は猫、シマウマはシマウマ。同じ種類の動物が皆同じような行動をとるのは本能によるものです。
「食欲」「性欲」「睡眠欲」も本能からくるものです。
一方で、瞬きや熱いものに触ると瞬間的に手を放すやけどのような、無意識的に起こる行動は反射と呼ばれる反応です。
パブロフの犬(レスポンデント条件付け)
ロシアの生理学者パブロフによる「パブロフの犬」という学習心理についての実験があります。
犬の唾液の習性を利用した実験です。
▼実験内容はこちら
1.犬に餌をみせると唾液が分泌されます。
2.餌を出すと同時に鈴を鳴らすことを習慣的に行います。
3.鈴だけを鳴らします。
結果:犬は鈴を鳴らしただけで、餌がないのに唾液を分泌するようになりました。
つまり、餌を見ると唾液が出るような普通の反射に、鈴のような関係ない事を合わせるても、唾液が出るようになります。
「パブロフの犬」のような条件付けの反射の仕組みをうまく使いこなせば、心を落ち着かせたい時にある動作を行うと心を落ち着かせることができるルーティーン的反射も身に付けることが出来るようになります。
※緊張してしまうことへの対策はこちら
パブロフの犬のような条件付けは、生活の中にも気付かないうち取り込まれているかもしれません。
仕事のある平日の朝は具合が悪くなってしまうことも一つの反射なのかもしれません。
ストレス社会ですね
人前で失敗したことがトラウマとして起こるパニック障害もを条件反射として脳内で学習されているのかもしれません。
オペラント条件付け(犬のお手)
「オペラント条件付け」は、パブロフの犬のような無意識的な反応とは逆で意識的な行動のことです。ある行動をすると、どうなる。という間接的に繋がる結果を学習することです。
例えば犬が餌をもらう為にお手をするような動作のことです。
ペットの猫がドアノブに手(前足?)を掛けて部屋を脱出するのも、ドアノブを倒せばドアが開くということを学習したからです。は横に長い取っ手のタイプで下に引きながら押すか引くで開きます。
フリスビーを追いかける犬も、水族館のイルカショーも、その行動をとったら褒められる(ご褒美がもらえる)ということを学習したオペラント条件付けであると言えます。
「仕事をしたら給料がもらえる」というプラスの理由も「失敗したら怒られる」というマイナスの理由も人間社会に染みついた条件付けです。
間接的価値であるお金
「お手をしたら餌」これは、ある動作で直接的な対価がもらえます。
このような分かりやすいお返しを「一次性強化刺激」と言います。
人もお金を貰うために働きます。もちろんお金は嬉しいのですがお金そのものには何も魅力はありません。ただの紙切れです。
この対価として貰った紙切れ(お金)を利用して別の欲しいものが手に入る、という
二段階的な要素で得る刺激は「二次性強化刺激」と言います。
オリンピックでメダルを獲った際の金メダルのような価値ある実績の証による
栄誉や信頼の獲得というステータスも二次性刺激に当てはまります。
行動連鎖(フリスビーを追う犬)
褒めてもらえることを覚えた犬は、投げられたフリスビーを咥えて飼い主のところまで戻ってくることができます。
これはいくつもの動作の積み重ねで出来ています。
1.フリスビーを追いかける
2.フリスビーを咥える
3.飼い主に渡す
4.褒めてもらえる
以上のように幾つもの動作が続いています。
これを「行動連鎖」と言います。
一連の動作を覚えるまでには、それぞれの動作を順番に覚えさせなければなりません。
フリスビーを追いかけないとだめ、フリスビーを咥えないとだめ。咥えたままどこかへ走り去ってもだめ。
目的の行動へ引き寄せていく作業が行動形成と呼ばれます。
いくつもの動作が必要な場合は、正解の動作の時だけ褒めてあげると徐々にその行動だけに絞られた行動を起こしやすくなります。
人の例だと職業能力開発訓練などもこれに当てはまるでしょう。
一方で、ある行動が無意味な行動だと感じることも学習です。
失敗の経験が「どうせ私なんて」という自信喪失になり、行動を起こす前から諦める逃げ癖に繋がる恐れもあります。
逃避・回避条件付け
人も動物も、嫌なことがあればその場から逃げ出そうとします。
それも危険や不安から身を守るための学習能力です。
犬が苦手な人は、散歩中に反対側から向かってくる他人の連れた犬から出来るだけ距離をおいて歩きます。
これは、過去に犬に追いかけられたという恐怖の記憶が残っているための防衛行動だったりします。
話が長い人や短気の人とは必要以上に話さないようすることも防衛行動ですかね。
学習性無力感 セリグマンの実験
逃避条件付けを利用したセリグマンの実験内容を紹介します。
犬を固定して電気ショックを与え、逃避能力をみる実験です。(恐い)
◆実験1
比較対象を逃げられない空間に置き、3パターンの環境下におきます
◆1群
電気ショックを与えるが、近くのボタンを押せば止まる。
◆2群
電気ショックを与えるが、どんな行動をしても止まらない。
◆3群
電気ショックを与えない。
以上、3つの群れに分けます。
さらに次の実験を行います。
◆実験2
◆2つに仕切りで区切られた部屋に通します。
実験1で3パターンに分けた犬たちを観察した結果は、実験2でこうなりました。
◆2群の犬は部屋を移動しようとせず、電気ショックを受け続けました。
要するに2郡の犬は、電気ショックを回避する可能性があるにも関わらず、実験1で体験したどんな行動をとっても逃げられないという経験から、逃げることを諦めてしまいました。
過去の経験から学習の無力さを覚えてしまうと可能性を諦めてしまうという実験です。
人間で同じような実験を行った結果は一律に同じ実験結果にはならず、2郡の状況下でも回避の仕方を学習する人がいたという結果でした。
知能による差が結果に影響することも考えられます。
ニートの学習性無力感
この学習的無力感が関連していると考えられているのがニートです。
ニートとして過ごす人々も始めからそのつもりではありません。
就職活動で社会に揉まれて採用試験に落ち続けた結果、自分は努力をしても内定がもらえない。人間関係で極度のトラウマになる、自信を失うなどの無力感に陥ります。
その結果就職や外出を諦めてしまい、ニートや引きこもりの生活になってしまう人が沢山現れます。
就職活動における学習性無力感
私も就職活動で不採用が続き、10社目を超えたときは「もうフリーターでもなんでもいいや」と、自暴自棄になりかけました。私自身も知らずのうちに経験していました。
こういった無力感は精神的なストレスにもなるので、うつ病へ悪化してしまう場合もある問題です。
心理学的に学習性無力感といわれるものは、動物として普通の心理状態なのだと客観視できれば状況を脱するヒントになるかもしれませんね。
過去の記憶が強いトラウマになっているために認識を改める訓練が必要な場合もあります。
社会的行動学習
これは思い当たる場面が身の回りに沢山あるなと思ったのですが、決められた行動をとるとき周囲の人(モデル)を真似て行動をするという学習方法です。
▼習い事などでコーチや上手な人が例を見せて、それに習って続く。
▼親が読書家だったので自然と子供も本を読むようになった。
▼上司が先に仕事をする(俺の動きをみて覚えろと背中が語っている)。
▼カラスがガードされたごみ置き場から餌を食い荒らす。
▼友だちがある料理店でポテトを頼んだら欠け歯が入っていたのでその店には行かないようにした。
▼親が美人だとその娘もかわいい気がする
特に、「親の背中をみて育つ」という言葉があることから子供は大人の影響を受けやすいです。
せめて子供が見ている前では良識のある行動を心掛けたいですね。
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ありがとうございました